身体的治療を望んでいるFTMの方にとって1つの目標になるのは「胸オペ」(乳房切除術)ではないでしょうか。
そんな胸オペは、
2018年(平成30年)の4月から健康保険適用(医療費3割負担)でも行えるようになりました。
この事をご存知だったでしょうか?
しかも保険適用の場合は「高額療養費制度」というオトク制度も使うことができるので、より胸オペにかかる費用を圧縮することが可能ということです!
僕が胸オペをしたときはまだ健康保険適用の制度がなかったので、自由診療(医療費10割負担)で行いました。
もし身体的治療に乗り出すときにこの制度があったなら、胸オペが保険適用になるように事を進めたと思います。
やっぱり10割負担はそれなりのお金が必要だから、
少しでも自己負担が減らせるなら嬉しいよね
ただし!
誰でも健康保険適用で胸オペを受けられるというわけではありません。
保険適用にするためには、明確な前提条件を全てクリアする必要があるんですよね。
それでは胸オペにかかる費用、条件、必要な手続きについてお話ししたいと思います。
1.胸オペを自由診療でしたまめたろうは費用がいくらかかったか?
2.健康保険適用(3割負担)の場合は費用がいくら必要になる?
3.実は胸オペは民間医療保険の対象になる ※保険会社によるけど
4.高額療養費制度を利用するにはどうしたらいいのか?
5.保険適用で胸オペを受けるための条件とは?
6.保険適用で胸オペを受けるために必要な手続きは?
情報がとても多くなってしまうので、今回の記事では1️、2、3、4のお金周りについてお話します。
胸オペを自由診療でしたまめたろうは費用がいくらかかったか?
僕は国内大学病院で胸オペを実施しました。
実際の手術・入院代だけでなく、医師へのオペ実施相談(カウンセリング)、入院前検査、術後経過観察、家から医療機関までの交通費などを合計すると、当時で約80万円。
内訳を細かく見ていくとこんな感じ。
入院前検査代 :約1万円
術後経過観察 :1回約1万円×2回
入院手術費用 :70万円強
家から医療機関までの交通費:往復約1万円×5回
というように、だいたい約80万円でした。
近年の薬価高騰、光熱費高騰などを考えるともう少し費用が上昇しているかも知れませんが…
入院期間は8日間。退院後3日、半年後に術後経過観察のために主治医のいる医療機関まで通院しました。
僕は胸オペをした時すでに理学療法士として働いていたこともあり、入院期間を含んで14日分有給休暇を消化することで対応しています。
僕はもともと胸が「F」あり大きく切る術式しか選べなかったことも、14日分もまとめて休みを取ろうと思った理由でした。
これは実感からですが、特に胸が大きいFTMの方へ
術後すぐには体力が戻りません。
僕は体力が元に戻ったと実感するまでに3ヶ月ほどかかりました。
年齢のせいもあったのかもだけど…
広く切るから切ったところが術後痛いですよ、やっぱり。
しばらくは皮膚がツッパって動くたび引きちぎれる感じで痛くなるのもあるので、術直後くらいはしっかり休んでおくことがオススメ。
術後それなりの年数が経った今でも、時々皮膚がツッパって腕を動かしたときに痛みが出るときもありますし…
もし可能であれば仕事復帰直後は仕事量を調整してもらいましょう。
僕は当時住んでいた家から特急電車で片道2時間ほどで到着する医療機関で胸オペを受けました。飛行機や新幹線が必要な地域から通う場合は、交通費もよりかかるはず。余裕を持って費用を準備しておきましょうね。
僕は6人部屋に入院しましたが、もし入院中個室がいいとなると別に差額ベッド代が必要になります。個室で!と考えている方はもう少し多めの金額を用意しておきましょう。
ちなみに僕が入院した医療機関は病室入口にある患者名札を「名字のみ」の表記にしてもらうことも可能でした。
日本GI学会(旧GID学会)の認定施設である病院であれば同じように対応してもらえると思うので、
気になる方は入院受付時か入院前検査時に医療スタッフに確認してみよう
健康保険適用(3割負担)の場合は費用がいくら必要になる?
医療機関への交通費を除いた約74万円が自由診療(10割負担)の費用だとすると
保険診療(3割負担)の場合は、約22万円となる計算です。
74万円が22万円…
50万円も差額があると人生の選択肢に差が出てきそうですよね(汗)
交通費は保険診療であっても通常通りかかるものなので、余裕をもって約30万円を保険診療(3割負担)で胸オペをするために用意しておくと安心かも。最低これくらいあればイレギュラーで仕事復帰までの日数が伸びたとしても対応し易いんじゃないでしょうか?
実は胸オペは民間医療保険の対象になる ※保険会社によるけど
働き始めている方の中には、ご自身で民間医療保険に加入されている方もいるのではないでしょうか?
入院日額〇〇円と設定されている医療保険の場合、胸オペのための入院であっても入院給付金が支払われることがあります。
一般的に民間医療保険は、病気やけがによる入院であれば適用されます。
「性別不合(性同一性障害)の胸オペ入院・手術を、病気治療のための入院・手術として考慮するのか」
これは各保険会社によって判断が変わるんですよね。僕は当時加入していた民間医療保険から、術後に入院日額分の保険金が支払われました。
外資系の保険会社だったため、トランスジェンダーのオペに対しての考え方がもしかすると柔軟だったのかもしれません。
胸オペで入院給付金が出るかどうかは保険会社によって考え方が分かれるところなので、オペ日程が明確に決まった段階で加入している医療保険会社に問い合わせるといいですよ。
問い合わせるときのコツとしては
・文面で残るようにメールで問い合わせをすること(言った言わないにならないように)
・性別違和の診断書が出ていること、医師と相談して胸オペを治療としてすることを伝える
(手元にある診断書や入院・手術同意書などを提示しておきたい)
・変にごまかしたりしないで事実をありのまま言うこと
まぁ、絶対給付されるというわけではないので、出たらラッキーくらいで
あんまり当てにしすぎずに費用を用意しておきましょうね!
あくまで例えばですけど、都民共済で生命共済総合保障型で一番人気の月掛金2,000円の総合保障Ⅰ型の病気入院は「Ⅰ日あたり5,000円」が保証内容として記載されています。
参考:都民共済ホームページ
高額療養費制度を利用するにはどうしたらいいのか?
医療費が高額になるときに使えるものとして
「限度額適用認定証」と「高額療養費制度」があります。
どちらも基本的には健康保険適用となる医療費に対して使えるオトク制度です。
今回は「高額療養費制度」についてだけお話します
気が向いたら「限度額適用認定証」と「高額療養費制度」の違いについて記事を書こうかなと…
そもそも「高額療養費制度」ってなんなのさ?
厚生労働省の資料から一部抜粋しました。
高額療養費制度は医療機関窓口に支払いを終えた後、自己負担上限額を超えた分を支給するという医療費助成制度です。
高額療養費制度を利用したらどれくらいの自己負担になる?
試しに例を上げて試算してみましょう。
例)
年齢69歳以下の年収400万円の人が1ヶ月で医療費が10割負担だと70万円かかった場合
高額療養費を使えるということは健康保険適用(3割負担)だから窓口で支払う費用は21万円。
年収400万円は上の表で「ウ」にあたるため、
80,100+(700,000−267,000)×1%=84,430円⇢これが自己負担上限額
210,000−84,430=125,570円⇢これが高額療養費として支給される金額
まとめるとこんな感じ
本来の医療費(10割負担):70万円
↓
医療機関窓口で支払う金額(3割負担):21万円
↓
高額療養費制度を利用する
申請後3ヶ月ほど後に高額療養費として還付される金額:12万5,570円
実質自己負担金額:8万4,430円
ちなみに高額療養費制度では公的医療保険の適用範囲外である、差額ベッド代は対象外です。個室を利用したいひとはやっぱり別でベッド代を用意しておきましょうね。
個室料金は病院によってまちまちなので一概には言えません。気になる場合は手術する予定の病院に個室代をまえもって聞いておきましょう。
ちなみに僕が昔勤務していた病院は、個室の差額ベッド代が1泊1万円でした
都心部にある有名病院には1泊20万超えの個室もあるらしいですよ、どんな部屋なんでしょうかね(汗)
自由診療(10割負担)だったら70万円の支払いが必要な医療費が、健康保険適用(3割負担)になるだけでもオトクなのに高額療養費制度まで活用すると8.5万円程度になる…
いやー、本当に医療費助成制度を使えるって威力がどえらいですね!
70万円が8.5万円になったら1/8ですよ?どえらいすぎて、むしろちょっと怖くなるくらい…
高額療養費の申請のしかた
今あなたの手元にある健康保険証を確認してもらうと、
下のほうに「健康保険組合」や「協会けんぽ」など保険者名称が書かれているはず。
これがご自身が加入している公的医療保険です。
加入している公的医療保険者名をググってもらうとホームページがヒットするので、
そこで「高額療養費支給申請書」をダウンロードしてください。
記入して必要書類を揃えたら、公的医療保険者へ申請書を提出すればOK
記入のしかたなどは各保険者で紹介してくれているのでチェックしてみてください。
マイナ保険証を利用している方が、
マイナ保険証を利用している(オンライン資格確認システムが導入されている)
医療機関にかかった場合は申請手続きなく医療費助成制度が適用されます。
こういうところは便利そうだけどねー、僕はまだマイナンバーカードつくってないのです…
ちょっと長くなりましたが今回の記事は以上です。
- 保険適用で胸オペを受けるための条件とは?
- 保険適用で胸オペを受けるために必要な手続きは?
これらについても記事をアップしようと思います。ありがとうございました!