前回の記事でこれらについてお話しました。
- 僕が胸オペしたときの費用
- 健康保険適用になった場合の費用
- 民間医療保険について
- 高額療養費制度について
今回は前回の続きでこちらのお話をしたいと思います
5.保険適用で胸オペを受けるための条件とは?
6.保険適用で胸オペを受けるために必要な手続きは?
保険適用で胸オペを受けるための条件とは?
①医師から性別不合(性同一性障害)の診断がされている、診断書が有ること
②ホルモン補充療法を開始していないこと
③国内の認定病院で実施すること
この3点が保険適用で胸オペを受ける場合の必須前提条件です。
それぞれの病院で他に条件があるかも知れませんが、この前提条件はどこであっても保険適用するのであれば必須。
1つでも満たしていなければ、
保険適用(3割負担)で胸オペをするのは難しいと思うよ
それはなんでなのか、詳しくみてみましょう。
なぜ胸オペを受けるのに診断書が有ることが必須条件なのか
自由診療(10割負担)でオペを行うならば、診断書が手元に無くても、
もっと言えば医師の診断を受けていなかったとしても胸オペをすることは可能です
自由診療(10割負担)の場合は美容医療と同じように、自分が「したい」と思えばできます。自由診療は、自己判断で進むことを選択できる医療行為ですから…
保険診療(3割負担)で胸オペを行うのであれば、公的医療保険のルールや医師が治療指針としている医療ガイドラインの考えに則ることが無難です。
FTMの胸オペに限った話ではないですが、オペを執刀する医師からみてルールや指針を考慮して判断を下すことはとても大事なこと。
とくに胸オペをする形成外科医と、FTM診断を下す精神科医は同じ医師というカテゴリーであっても専門領域が違います。
「専門医の診断書」という明確なものを保険診療でオペをするには必須だとルールづけするのは
安全な医療技術提供を考えるならすごく自然なことだと、医療従事者の端くれとして僕は思います。
なので、診断書なんか待てん!知らん!というかたは
自由診療(10割負担)で胸オペをしましょう!
保険診療(3割負担)でしたいというかたは時間は少しかかりますが、GIDガイドラインに則って治療を進めましょう。
ガイドラインではあくまで
”医療者に対する治療指針であり、治療を受ける者に厳格に強いるべき規則ではない”
と述べられています。
ただ、皆さんのオペ執刀に関わる人は”医療者”であることも忘れないでほしいなと思います。
参考元:性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第 4 版改)
日本精神神経学会 性同一性障害に関する委員会
なぜホルモン補充療法を開始していないことが必須条件なのか
こちらは保険診療と保険外(自由)診療の混合は原則的に認められていないことが理由です。
どういうこと?
診断書が有る状態であったとしても、戸籍的に異性の性ホルモンを摂取することが保険外(自由)診療だからだよ!
前項でも少し触れましたが、
保険診療(3割負担)で胸オペを行うのであれば公的医療保険のルールに則る必要があります。
戸籍が女性のままのFTMに対するホルモン補充療法は、公的保険上では保険外(自由)診療となってしまいます。
診断書を保有し、胸オペをし、10年以上ホルモン注射を継続していますが、保険外(自由)診療なので10割負担
日本でFTMに対するホルモン補充療法が始まったのは1996年頃。
これくらいの時期にガイドライン(第1版)が作成されているので、同時期くらいから医療機関でホルモン補充療法が開始されたとしても自然ですよね。
そうなると日本国内で身体的には女性となるFTMに対して、男性ホルモンを投与するようになって30年ほどしか経過していない…
日本全体の人口からみても、ホルモン治療を長期間継続投与しているFTMの人数(症例数)がとても少ないので”安全性、有効性が確認できている”とは言えないのかもしれません。
ちなみに戸籍が男性になったFTMがエナルモンデポーなど短期型男性ホルモン注射をする場合は、男性更年期障害(LOH障害)とみなされホルモン補充を保険診療(3割負担)として行うことができます
現時点でLOH障害の注射でのホルモン補充では短期型しか保険診療として認められていません。国外ではネビド(長期型男性ホルモン)での摂取が主流なんですけどね、FTMだけじゃなくLOH障害でも。
僕が継続しているネビドは戸籍上男性であっても保険外(自由)診療なんですよねー。
LOH障害のかたも長期型のほうが楽なんじゃないかと思うんですけど…。
こちらもネビドが日本国内で使われ始めたのか2010年代かららしいので、日本人の体格に対して安全性の確認がしきれていないという判断なんでしょう、おそらく。
国内の認定病院で実施すること
国内の胸オペしてくれるところであればどこでもいい!とならないのが厄介なところなのですが…
胸オペを保険適用で行うには「一定の施設基準を満たした医療機関」に限定されています。
一定の施設基準を満たす認定施設を日本GI学会(GID学会)が公開しているので確認してみました。
2024年8月時点で確認したところ、最新施設情報は2023年4月に更新されたものでした。
学会HPによると日本国内に8箇所あります
参考元:日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会 性別適合手術の健康保険適用について
保険適用で胸オペを受けるために必要な手続きは?
保険適用で胸オペを受けるためにはこれらのことが必要です。
①胸オペを終えるまでホルモン補充療法は行わない!カウンセリングだけ進める
②GIDの診断ができる精神科医が作成した診断書
③胸オペに関する意見書
※僕は診断書をもらったときに同時にもらえました
④上の2つが用意できた段階で通える場所にある認定施設に問い合わせる
※それぞれの病院で相談窓口が違うと思うのでHPでチェックしてみて
⑤認定施設の判定会議でオペの了承を得る⇢具体的なオペ予定日をすり合わせて決定
このときに念の為、「健康保険適用でオペができるか」再確認しておきましょう
※民間医療保険に加入している人はオペ日程が決まったら保険会社に入院保障が使えるか問い合わせる
⑤入院費用を一括で支払う
※領収書をなくさないように必ず保管して!
⑥加入している公的医療保険者のHPから「高額療養費支給申請書」をダウンロードする
⑦記入して必要書類を揃えたら申請書を提出する
大まかにお伝えするとこんな感じです。
僕が胸オペをしたときはまだ胸オペに対して保険適用制度がなかったのですが、診断書をもらうまでホルモン補充はしていませんでした。
診断書が手元に来た時点で認定施設に問い合わせをして胸オペに至っています。
僕はカウンセリング開始〜診断書取得までに2年半くらい、
認定施設に問い合わせ〜胸オペ実施までに2年くらい時間を要しました
保険適用でオペをするにはこれくらいの時間が必要になることと、ホルモン補充を開始できるのはオペ後からになるので身体的変化の時期をどう過ごすのかを考えておくのが良いと思います。
身体的変化にかかる時間がゆっくりめでもいいからお金がオトクな方をとるのか?
身体的変化を早く済ませてしまったほうが精神安定につながるととるのか?
これはどちらも正解なので、
あなたの今後の人生にとってベストだと思える方を選んでほしいな
僕がオペをするときに保険適用制度があったら、間違いなくお金がオトクな方をとったことでしょう(汗)
今回の記事は以上です。ありがとうございました!