若い世代のFTMの方の中には「男性ホルモンを打ち始めるとどんな変化があるのかな?」と疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事ではネビド(長期型男性ホルモン)補充歴10年以上の間に経験した変化と、医療職の端くれとしての健康にまつわることについてお伝えします!
ホルモン補充療法を始めると起きる変化
ホルモン補充を初めてから、身体面と精神面の両面に変化を感じました。
僕の体感(当時の記録を見て)だと、同時期ではなく身体面が先に変化したようです。ちなみに記録を取っていたのは僕の理学療法士としての変態性が発揮されたため(汗)
自分の身体が大きく変化する機会って一般的には珍しいですからね、自分が被検体。
- 身体面の大きな変化期間 ホルモン開始直後〜2年後くらいまで
- 精神面の大きな変化期間 ホルモン開始1年後〜5年後くらいまで
【身体面でホルモン開始半年以内におきた変化】
食欲が止まらない、性欲が止まらない、眠くてしょうがない
声が枯れすぎて喋れなくなる、ク◯が肥大してきて下着にすれて痛すぎる
産毛のヒゲが生えてくる
【身体面でホルモン開始1〜2年くらいにおきた変化】
ヒゲが生えすぎてヒゲ剃りが辛い、体毛が濃くなってすごい気になる、禿げてくる
3大欲求が落ち着いてくる
【精神面でホルモン開始1年後くらいからおきた変化】
性格的に明るくなってきた、鈍感になってきた、悩みにくくなった
【精神面でホルモン開始後3年以上たっての変化】
なんとかなるでしょ!いける、大丈夫!という考え方になった、喜怒哀楽がはっきり表出するようにいつの間にかなっていた
まめたろうにとって良かった変化、イマイチだった変化
ホルモン補充をする前はヒゲに憧れを持っていて
あごひげとかはやしちゃおっかな〜!!
と、思っていましたが
ヒゲが濃すぎて夕方には青ヒゲになり、深ぞりのしすぎで肌荒れが酷くなって翌朝のヒゲ剃りで悶絶する羽目に・・・
もうつらすぎて今はヒゲを医療脱毛しツルツルにしました。
ホルモン補充療法を始めて見た目が男性になったことで、ずっと行きたかったバーバー(理髪店)に行けるようになりました。それまでは美容室で「短くして!」といっても思うように切ってもらえなかったのでそのストレスから開放されたのは嬉しかったです。
整髪料にもこだわりはじめ、ジェルだ、ワックスだ、グリースだと集めまくっていたこともありましたねぇ・・・特に理髪店で出会ったクールグリーススペリオーレ バニラ が香りが好みでこれだけは今でも使い続けています。
スペリオーレシリーズは容器瓶の外観もかっこよくて部屋においていても変に浮かないデザインなので、そこも気に入っています。
グリースって水溶性ポマードなので、ジェルやハードワックスと違って簡単に洗い流せるのもお気に入りポイントの1つですね。
ホルモン開始して2年経過する頃には自分が薄毛になってきていることに気がつくキッカケがあり、AGA治療を始めて今も継続しています。
ホルモン治療のおかげで男性化できましたが、男性化がすすむとそれはそれで悩みがでてくるんですね。
ヒゲが生えることをしておいて医療脱毛をし、ハゲることをしておいてAGA治療をする・・・矛盾を体現してるなぁ、お金余計にかかるなぁ・・・
「ホルモンをすると寿命が縮む」は本当か?
これについては、「要因にはなり得る可能性があるが絶対ではない」というのが僕の見解です。
「ホルモンをすると寿命が縮む」という論は、この言葉がどの範囲までの影響を指しているのかによって受け取り方が変わるなと思っています。
男性ホルモン補充療法は多くが筋肉注射で行われていますが、きちんとした医療機関で治療継続していれば生来男性と比べても同程度の濃度までになるように調節されています。
男性ホルモンに限らず性ホルモンは多すぎても、少なすぎても体に影響が出るものなのでホルモン補充をするFTMは体の変化が起きる程度という変化のボーダーライン(閾値)にちょうど達する範囲くらいであればもう十分でしょう。
「男ホルは濃ければいいっしょ!」って言うものじゃないってこと!
男性ホルモンはいわゆるステロイド製剤なので、ドーピングのような影響が体に出てきます。
心肺機能向上などがイメージしやすいでしょうか?心肺機能が向上するということは、酸素を筋肉に運ぶ機能が向上するということです。
テストステロンには造血作用といって赤血球を作る作用があるので、血が濃くなって多くの酸素を体中に運べるように変化するんですね。
赤血球量が基準値を超えてくると「多血症」になります。簡単にいうと血が濃すぎてドロついてくると・・・
血液がドロドロになりっぱなしになると、血管に詰まること(梗塞)や高血圧になりやすくなり心臓などの循環器系に悪影響を与える要因になります。
ただ、ホルモン治療をしているFTMは脳梗塞、心筋梗塞、大動脈解離になって早死するんだ!なんて研究報告を僕は見たことがありません。
海外のジェンダークリニックで行われた、平均ホルモン投与歴18年の患者1260人(内、FTMは360人)を対象にした報告では、FTMの死亡率は一般人口比に対して1.12倍とほぼトントン。
つまり長期間ホルモン補充をしていても適切量を守れているFTMの寿命が縮んでいるとは言えないというわけですね。
この報告も考えると、ホルモンのせいで寿命が縮むのではなく
体を気にかけないと、そりゃ病気になりやすくなるよね
と僕は思うわけです。
ちなみにネビド(長期型男性ホルモン)補充歴10年以上のまめたろうは「女性」での血液検査では多血症にひっかかり、「男性」での血液検査では正常値。
夏の時期は汗で脱水すると相対的に血が濃くなってしまうと考え、
水分補給は人一倍気をつけるようにしています。
夏場は1日2L以上は摂取してますね、水分。
訪問領域の理学療法士として働いているとどうしても外に出る機会が多いので、汗もすごくかいちゃいますし(汗)熱中症予防としても必須ですからね!
ホルモン補充療法は人生の幅を狭くする可能性もあることは知っておいてほしい
ホルモン補充療法(筋肉注射)は開始すると、短期型であれば数週間、長期型であれば数ヶ月おきに打つことになります。
これを数十年という長期間継続していく、このこと自体が金銭的にも時間的にもホルモン補充をしない人と比べると「負担が増えているよな」と我が事ながら思うことも・・・
トランスジェンダーに対するホルモン補充療法は、2024年時点で戸籍の性別変更が終わっていなければ自由診療で行われる治療。
そのため公的健康保険が使えず10割の窓口負担が必要です。
男性へ戸籍変更が終わっているFTMの場合は、「LOH障害」という扱いになり、
短期型ホルモンであれば3割負担でホルモン補充することも可能です。
しかも製剤原薬を製造している海外工場からの供給減、ウクライナ侵攻によるヨーロッパからの輸入ルートが迂回されるようになり輸送コストが高くなる、円安傾向などが重なり注射料金がここ数年でどんどん高くなってきました。
僕がネビドを打ち始めた10年ほど前は、1回あたり2万後半代。
最近は1回3万数千円となかなかの値上がり!!
ネビド開始して2、3年くらいまでは3️ヶ月おきに投与していました。年4回投与だと注射代だけでも年間10万円に達します。これにクリニックまでの交通費、移動時間もかかってくる・・・
年間10万円を10年継続したとしたら、100万円!ホルモン治療代だけで!
しかも当時はクリニックまで片道1時間近くかけて通院していました。こんな感じでホルモン補充を開始する・継続することは金銭的、時間的苦労を自ら背負うことになります。その対価として望みの性の外観という心理的安定は得やすくなるわけですが…
ネビドの投与間隔が3ヶ月おきというのは絶対ではなく、
男性ホルモンの値が低すぎなければ投与間隔を伸ばしていっても大丈夫です。
僕は医師と血液検査結果を見ながら投与間隔を少しづつ伸ばしていき、現在は半年ごとに通院しています。それでも年間7万円程度になるので、10年間だとしたら70万円かかってますけど(泣)
僕は最初のホルモン補充からネビドの投与を継続しています。最初からネビドを選ぶのはかなり珍しいと当時の主治医には驚かれましたね〜
もしかしたら、僕は短期型ホルモンを一度も体に入れたことがない天然記念物並みのFTMなのかも知れません。どうなんでしょう?確認しようが無いけども。
10年前、国内でネビドを長期投与している人の情報を僕は見つけられず、海外の医療文献を漁って自分で予想立ててネビドを選択することにしました。
その理由はこちら。
今のところ上記の予想通りで過ごせており、ホットフラッシュなどの更年期症状は今まで1度も感じたことがないし、投与間隔も半年に伸ばせたなら僕にはもう十分なくらいです。
これらを調べ、考える時間と労力もホルモン補充を必要としない人にとっては本来無用なものです。
10代・20代という時間、お金、経験の複利が最大化できる時期に、性をトランスすることだけに注力してしまうのはその後の人生に大きく影響を残してしまうのではないかと僕は考えてしまいます。
性別というのは生きていくうえで重要なことではあるけども、身を置く環境次第で精神負担感は大きく変わるものだからです。
僕もこれまで色々苦痛を体感する機会がありましたが、
特に理学療法士として働くようになってからはその機会も大きく減りました。
就職・転職するたびFTMであることを履歴書の段階でカミングアウトしていますが、普通に正社員として働いています。
僕は30代に入ってホルモン補充を開始しました。
性別変更していないものの、現在は日常生活すべてを男性として営み、男性理学療法士として扱われて普通に企業で働いています。
人生100年時代と言われているとおり、先は長いので慌てなくても望みの生活が得られる時期が来ます。目標に対して行動し続けていれば。
大事なのは自分にとって人生自体をより良くするために
「今その選択が本当に必要な時期なのか」を考えること。
これが大事なんじゃないかと思っています。今回の記事はこれで以上です。
ありがとうございました!