現在学生の方、医療機関に勤めている方のなかでいずれ、
ある程度臨床経験を積んでから、
訪問で働きたいと思っているだよね〜
考えている方は多いんじゃないでしょうか?
そんな方々に僕は言いたい、現役の訪問の理学療法士として働くものの実感として…
いずれっていつ?
訪問以外の経験は訪問の経験じゃないから、
本当に訪問に来たいなら早いほうが良いよ!
僕が最初に訪問領域に足を踏み入れたのは臨床3年目4月(病院経験2年間)でした。
そんなペーペーから入って今ではどっぷり訪問の理学療法士をしてます。
訪問に行きたいと思ったなら、迷いすぎないで早い方がいいですよ。
なんでそう思うのか、それは3つの理由からです。
リハの収益性が下がってきている
2024年6月以前・以後で訪問看護からのリハビリの収益性に大きな変化がありました。
訪問看護所属セラピストが要介護1以上の方に、60分リハ訪問した時の報酬点数はこんな感じで変更。
2024年6月以前:293単位(20分あたり)×3回=879単位
2024年6月以降:294単位(20分あたり)×0.9×3回=792単位
(1点≒10円でレセプト計算される)
1回の60分訪問で87単位も少なくなってます。
もし60分訪問を月間100件訪問していたら、8700単位もセラピストの稼ぎが減ってるわけですよ!(※1点≒10円計算ですよ!!)恐ろしい…
やってる仕事は全く同じなのになぁ〜?
2年ごとに医療報酬改定、3年ごとに介護報酬改定がされていますよね。
特に6年ごとの医療・介護同時改定の年は大きな報酬改定が起こりやすいです。
1番最近だと今回2024年が同時改定の年でした。
障害の改定時期でもあったため、トリプル同時改定で大きな変化が起こるだろうとは前々から言われていたのですが…
訪問領域で大幅減算にあったのは訪問看護所属のリハのみ。
訪問領域で働いているPTの多くは訪問看護所属です。
そもそも8割近くのセラピストが医療機関で働いているので、PT全体で見ると訪問領域で働いているPTは少数派なのもわかりますねー。データを確認すると…
データ引用:日本理学療法士協会 統計情報 ※データを元に表作成
最近は医療機関・施設付きの訪問リハビリ(以降『訪問リハ』と表記)も増えてきましたが、数はまだ訪問看護ほど施設数が多くありません。
ちなみに訪問リハのセラピストが要介護1以上の方に60分リハ訪問した場合の報酬点数がこちら。
2024年6月以前:307単位(20分あたり)×3回=921単位
2024年6月以降:308単位(20分あたり)×3回=924単位
(1点≒10円でレセプト計算される)
訪問看護リハは大幅減算でしたが、訪問リハは免れています。
訪問看護リハで働くセラピストは自らの『稼ぐ力』を国の動向によって大きく削がれたわけです…
訪問看護の多くは株式会社が運営しています。
医療・社会法人併設の訪問看護もありますが、その場合リハ職は『訪問リハ』として展開していることがほとんどです。
同じように訪問領域のリハ職を雇うなら、高い利益が出せる所属で働かせたいですよね。雇用側としては。
医療機関・施設であれば、訪問リハを”みなし開設”してしまえることも要因かもしれません。
『訪問リハ』開設には看護師不必要で、リハが1人以上在籍していれば訪問リハを開設できるお手軽さがありますからね〜
対して訪問看護経営者目線で見れば、稼ぎが悪くなったリハを人数多く雇い続けるのは収益性を考えると効率が悪い。
今いるリハ職常勤は解雇する訳にはいきませんが(現時点の法律上、会社は簡単に社員を解雇できないから)、新しくリハ常勤を雇うのを躊躇してもおかしくありません。
また、所属看護師6人に対してリハ職4人の人数割合にするといった方向性が、前回の介護報酬改定時に厚生労働省から提案がありました。
コロナ禍があって一旦取り下げになりましたが、今後も訪問看護リハの『稼ぐ力』はリハ以外の所からの影響で減らされていく事でしょう。
これらを考えると、
現在訪問領域の多くを担っている訪問看護のリハ求人が減り、
空き席争奪戦勃発および、より良い求人には応募が集中するかと僕は思うんです
良い求人の場合、スタッフの定着率が高く、退職される方が少ないので事業拡大を続けている会社でないと空き席自体できないかもしれません。
『訪問リハ』ならまだこれから増えるかもしれませんが…、現在のパーセンテージを見ると全然足りないですよね。あの数字、日本全国の理学療法士協会に所属してるPTでの割合ですよ?
できるだけ自分に合った環境で、訪問領域で働きたいと考えている方は早めに行動に移さないと座る席自体がなくなっちゃうかもしれませんよ!
いいところほどあっという間に席が埋まっちゃうぞ〜
訪問は体力勝負だから若い方が有利
病院や施設勤務と違う点の1つはお宅に『訪問する』ということ。
訪問は移動する事が必須!ステーションで待っていても利用者さんはきてくれません、当たり前ですが…
東京23区内での訪問移動方法は、電動自転車でしている事業所が多い印象です。
23区内の住宅街は道が狭いところが多く、一方通行も多い。
何より訪問先近くに駐車場がない。
駅前に商店街があるエリアだと午後の時間帯は自転車以外の車両通行禁止にしてしまう所も多いです。
23区内に限っては電動自転車が1番移動しやすい気が僕はしています。
自宅に駐車場がないお宅に訪問しても自転車ならバイク駐輪場を探す心配もないですから。東京都23区内の訪問ステーションで働こうと思う、多くの方が電動自転車で移動することになるでしょう。
会社によって違いがありますが自転車移動するステーションの場合、訪問エリアをステーションから半径2〜3kmで設定しているところが多いです。
このエリア内を行ったり来たりして、訪問するということ。
訪問ルートによっては円周の端から端の直径距離を移動することもあります。
半径2kmだから近い!と思うかもしれませんが、訪問先までの道は一直線ではなく曲がり角があるので実際の移動距離はもう少し延びてきます。
もし1日に60分訪問を5件するとすると、総移動距離が多くて10kmくらいになる日もあるということですね。
直径を何度も走らせるような訪問ルートが定期になることは少ないでしょうが、休みのスタッフの代診で行くとか、ご利用者さんの都合で定時訪問時間から変更するなんて日もあるはず。
最近では夏の苛烈な日差し、ゲリラ豪雨にも耐えながら移動するわけです。
天候・気温の変化をダイレクトに受けながら移動して、訪問したらリハビリをするという感じ。体力がないとつらい思いをするかもしれません。
その代わり、給料は病院勤務よりも高くなることが多いはず。
インセンティブ設定にもよりますが、大体月間訪問件数が100件(1件60分訪問として)前後で月手取りが30万円超えてくると思います。
月間100件以上訪問に出ていれば他の手当や賞与を考えると、役職がついていない職員でも年収500万円を超えてくるはずです。理学療法士としては高給の部類ですよね、これくらいの収入があると。
役職がついたりするともう少し上振れしていきます。
訪問ステーションは1つ1つの事業所が小さめなので、若くてもリハ部門管理者になれる可能性が十分あります。管理者になれれば、所属している会社によっては年収550万円以上も狙える…!
20代後半〜30代の役職なし理学療法士で年収500万円以上を目指すなら、体力勝負の訪問領域に来るのは理に叶った選択と言えます。医療機関勤務じゃまず無理でしょう?
その後管理職ポジションを目指すにしても、病院よりかは競争率が少ないので可能性が高まりますよね。働いているPTがそもそも少ないし、ステーション1つは医療機関ほど大きくないですから。
40代、50代になってから初めて訪問領域で勤務するとなると、移動の体力勝負や訪問件数を回る体力勝負になれないかも…
訪問件数が伸びないとインセンティブがつかないぶん、どうしても収入が伸びません。
若い年代で訪問領域に入っておいて、年齢を重ねたら管理職席に入れるようにキャリア形成していくと理学療法士としての生涯年収を比較的高く維持できるかと思いますよ!
先延ばしにすればするほど転職しにくくなる
病院時代の先輩たちを見ていると先延ばしにしていて、『いつかは訪問に…』と言っているのに転職できずにいる人がちらほらいました。
それも結構多い…
よく転職の節目に言われるのは退職金が発生しやすい「臨床3年経過後」「臨床5年経過後」、そして区切りの良い「臨床10年目」だと思います。
特に臨床3年経過後は転職を考える方が多いですよね。
昔から臨床3年を超えると理学療法士として一人前として見られると言われている慣習によるものと、勤続3年以上で退職金が発生する医療機関が多いからでしょう恐らく。
実際に訪問領域の求人に「病院経験2年以上〜」、「臨床経験3年以上〜」など注意書きがあるところも多いですよね。
専門卒や大卒で臨床3年経過直後だと24歳〜26歳くらいでしょうか?
訪問に転職もいいな〜、給料も上がりそうだし。
でもな〜、もっとベテランになってからじゃないと…1人で訪問に行くなんて怖いし、もうちょっとこのまま経験積んどこう!
そして臨床5年目になります。ストレートで新卒入職している方なら26歳〜28歳くらいでしょうか?
これくらいになると結婚したり、役職がついたりなどで自分以外のことも考えないといけないフェーズになってくる方も多いのでは?
訪問に転職もいいな〜、給料上がりそうだし。
でもな〜、子どもも生まれたし主任になってって言われちゃったし…
今じゃないかな、もう少し生活がおちついてからかな
そして臨床10年目になります。ストレートで新卒入職している方なら31歳〜33歳くらいでしょうか?
これくらいになるとマイホームの購入をしたり、子どもが増えていたり、ベテラン理学療法士として新人教育や委員会を任されたりしているかもしれません。
訪問に転職もいいな〜、給料上がりそうだし。
でもな〜、子どもたちもまだ小さくて手がかかるし、仕事も忙しすぎて転職活動する時間なんてないよな〜。
もう少し落ち着いて時間ができてからにしようかな
そして子どもたちがある程度手が離れる中学生になった頃、臨床20年目の41歳〜43歳くらいでしょうか?
訪問に行ってみたいって思ってたけど、体力的にキツそうだし今から新しい職場っていうのも大変そうだしなぁ…。う〜ん、迷うなぁ…、もう少し考えようかな…
そうやって結局その場から動けなくなっているセラピストを病院時代にたくさん見てきました。
なんでもそうだとは思いますが、他人の目で意思決定しようとすると迷いが生じて結局選択できなくなります。
自分がどうしたいのかで決めないと、選択の場面すら訪れないし、選択チャンスが来ていたとしても気がつくことができないと僕は思っています。
もちろん『守るべきものがある、だから転職しない!』と自分で決めたのならそれはとても良い選択です。
選ぶにしろ、選ばないにしろ人のせいにして選んだフリ/選ばなかったフリをする方がよっぽどいただけません。
訪問でバリバリに働いてみたいという方は、体力的・制度的に時間が限られているから早いうちに訪問を体感してほしいです。
訪問が合わなかったならまた別の病院や施設に移ればいいだけです。
転職=ただの引越しみたいなもんだと僕は思っています。嫌なら住み替えればいい!
それくらい気軽な気持ちでまずは訪問に足を踏み入れてほしいと思います。
僕は病院時代よりも訪問のほうがよっぽど楽しく仕事してる気がしてますよ!
訪問に来たい気持ちがあるならぜひとも働いてみてほしいなぁ、僕は性に合ってて好きですね。
今回の記事は以上です。
ありがとうございました!