僕がカウンセリングに通い始めたのは30歳を迎えてからです。ずいぶんゆっくりですよね。
多くのFTMの方は20代、早ければ10代から治療を進めていると思います。
30代になってから治療を開始するなんて遅すぎるんじゃない?
僕にとってはコスパ、タイパのバランスが良くなるだろうなと考えたのがそれくらいの時期だったからね。僕にはちょうどいいのよ
僕が30代になってから治療を進めようと思っていたのは、10代・20代の学生の頃からでした。
ここからはあえて治療速度をゆっくりにすることで、得られると考えるメリットについてお話します。
ゆっくりすることで何が起きるのか?
治療をゆっくりすることでどんなメリットがあると思ったから、僕はゆっくりを選んだのか?
その理由がこちらの3点。
- 金銭負担を軽減できると考えた
- 健康負担を軽減できると考えた
- 法改正など、社会情勢がすこしづつ変化してきている
金銭負担を軽減できるとは?
性別変更までに230万円くらい必要だし、その後のホルモン継続代もかかるよな…
ということは、その金額を先に資産運用に回したほうが将来の負担が少ないか…?
FTMのいわゆる「治療」と言われているものは、ココロの性にカラダの性を近づけていく医療行為と考えてもらえたらと思います。
医療行為なので医療機関に通院する必要があるのですが、治療をしないままでいれば当然医療費はかかりません。
つまり治療開始を自分が納得できる時期まで後ろ押しすればするほど、医療費という金銭的負担が減らせるってことです。
たとえば18歳から22歳の一般的に大学在籍中にカウンセリング(診断書取得)〜性別変更までしたい!と思ったとしましょう。
4年と短いスパンでオペまで行くことを考えると、保険診療適用(3割負担)でオペをするのは病院のオペ空き枠的に難しいので全てを自由診療(10割負担)で実施する可能性が高いです。
僕は胸オペ(自由診療で)までをしているのですが、カウンセリングなども含めるとここまでの治療でも累計医療費を130万円ほどかけています。
子宮・卵巣摘出術まで自由診療で行うとすると+ 70〜100万円は必要になるはずです。
そうなると、ここまでで約230万円ほど必要な計算。
しかも卵巣摘出後はホルモン補充を中断する/サボることは基本的にできません。
性ホルモン欠乏のために更年期障害症状がでてしまうからです。
学生もしくは社会人として最初の時期に200万円以上貯金して、すぐ使い果たして貯金0円に戻るような状況になるかもしれないことが僕は怖かったんですよね。
だったらその金額を資産形成で回して、長いスパンで治療を進めたほうがその後の人生の金銭的不安を払拭できるんじゃないかと考えました。
皆さんはジャックとジルの話をご存知でしょうか?
資産形成界隈では複利の力を話す上でとても有名な話の1つです。
ジャックとジルの投資話
ジャックとジルは双子の兄妹です。
ジャック: 18歳から8年間、毎年50万円ずつ投資し、その後は投資を止めました。
ジル: 26歳から65歳まで40年間、毎年50万円ずつ投資を続けました。
両者とも年利10%で運用したと仮定します。
結果 65歳時点での資産額:ジャック: 約9億3,000万円 ジル: 約8億8,000万円
18歳〜26歳の8年間に400万円だけ運用に回したジャックが、
40年間で2000万円運用に回したジルより多くなってるんだよ
もちろん年利10%は高いです。
でもこれはS&P500インデックスの過去50年の平均リターンとほぼ同じ。
オールカントリーという全世界まるっと変えるインデックスの過去30年平均リターン7%で考えると、ジャックとジルの65歳時点の資産はほぼ同額。
年齢が若いうちにある程度の資産を投資市場にさらしておくことは、将来の金銭負担や不安を軽減することを僕は知ってしまっていたからです。
健康負担を軽減できると考えた
2024年時点の日本の法律では、子宮・卵巣摘出術まで終えないと戸籍の性を”男性”に変更することができません。
若いうちに健康な卵巣摘出をすることは、年齢を重ねたときの健康負担を考えるとマイナスになるんじゃないか…?
なぜこう考えたのか、これは女性ホルモンが年齢を重ねたときの健康状態に影響するからです。
卵巣摘出してしまうと、性ホルモンをほぼ自分の体で作り出すことができません
女性であっても少量の男性ホルモンを、男性であっても少量の女性ホルモンを体で作り出していますが、卵巣摘出したFTMはどちらの性ホルモンも自らつくり出すことがほぼ困難なんですよね。
だから生涯において、男性ホルモン補充療法が必要となってくるのですが。
では、女性ホルモン(エストロゲン)にはどんな作用があるのか?
- 血管拡張作用⇢高血圧の抑制になる
- コレステロール調整⇢LDL(悪玉)コレステロールを減少、HDL(善玉)コレステロールを増加させる
- 抗炎症作用⇢炎症を抑えることで、動脈硬化の進行を間接的に抑える可能性がある
- 骨粗鬆症予防⇢骨密度の維持にエストロゲンが寄与している
この他にも可能性があると言われているものがいくつかあります。
高血圧・高コレステロール・動脈硬化・骨粗鬆症…これらは在宅で高齢者の理学療法をしていると本当によく見かける疾患につながるものです。
脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折…
これは僕が今でも胸オペまでにしている理由の1つでもあります。
戸籍変更までしなくても、社会生活を望みの性で過ごせているのなら将来の健康負担を増やしてまで治療を進めることもないのかな〜と思っていますね。
法改正など、社会情勢がすこしづつ変化してきている
若い頃ニュースで放送されていた国会の様子を、衝撃を持って見ていた事を僕は今でも覚えています。
それは2004年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(通称:性同一性障害特例法)が施行されることが決まったときの様子。
この法律ができるまで日本ではSRSをしようが戸籍変更することができませんでした。
たった20年前の話ですよ、最近ですよねー
欧米では1970年代〜1990年代にはSRSをすれば戸籍変更できるようになっていました。
日本では2004年になるまでダメだったので、そういう未来が来ることはないだろうと若い頃の僕は諦めてしまっていたんですね。
どうせなにやっても無理じゃんと思っていた僕には、
戸籍を変えられるようになったんだ!とニュースで知っただけでも目の前の扉がバーン!!と
大きな音をたてて開いたような気持ちになったことを鮮明に覚えています。
それから数年経ち、2010年代には欧米の国々でSRSなしで性別変更が可能となっていました。
2023年10月には日本の最高裁判決でSRSを性別変更の要件規定とするのは「違憲」と判断されましたね。
もし欧米の背中を追っているとしたら、あと10年くらいしたらSRSなしでも戸籍の性別変更が可能になる未来が有るのかもしれません。
そういう未来がくるのであれば、SRSをするという金銭負担、健康負担がなくなってくれるのだけど。
今回は、あえての作戦、長い人生を考えると治療はゆっくり進めるのも吉?についてお話しました。
日本人の平均寿命は年々伸びてきているのはご存知でしょう。2024年、現在65歳の余命はこう試算されています。
女性:90歳までの生存率49% 100歳までの生存率6%
男性:90歳までの生存率25% 100歳までの生存率1%
2024年時点で50代以下の方は若ければ若いほどより生存率が高くなっていることでしょう。
10〜20代の若い内に治療を全て終えるのも1つの正解ですが、僕は残り3/4の人生のほうが重要じゃないかと考えました。
できるだけお金の不安が少なく、健康でパートナーとの時間を長く過ごせること。
僕にとっては自分の戸籍の変更よりも、そのほうが大事だったと言うだけのことです。
あなたにとっての人生の優先事項は何でしょうか?
それを満たせる方法を選べているのなら、あなたの選択は大正解だと僕は思ってるよ!
今回の記事は以上です。ありがとうございました!